2015-01-01から1年間の記事一覧

果てしなき渇き 深町秋生

大いなる復讐の完成 ぶっ壊れてる父親が娘を探す。その娘は父親の想像していた存在では全くなかった。家族が自分の知らないところでとんでもないことをやっていた、と言う点で、「世界の終わり、あるいははじまり」に似ているかもしれない。 復讐は何も生ま…

友がみな我よりえらく見える日は 上原隆

人が自尊心を回復する方法は様々だ。 その一つは、自分と同じような、あるいはそれ以下の生活や精神でいる人を見ることだと思う。友がみな 我よりえらく 見ゆる日よ 花を買い来て 妻と親しむ人生は苛酷だ。 そうであっても、頭をおかしくしてでも、何かを掴…

2015/12/29

からかい上手の高木さん に漂っている、壊れやすさと悲壮感。 二人は幸せなように描かれているけど、男女が同じ立場でからかい合う、なんていうのは、小中学生の一時期にしか起こり得ないと思う。 (人生が充実している人はそんなことはないのかもしれないけ…

2015/12/20

漫画と小説では漫画の方が好きだけど、感想を書くなら小説のほうが、いいと思う。 マンガは例外はあるけども、ほとんど紙面上で表現されているから、後からなにか言うべきことがほとんどない。 例えばワンピースもキングダムも、めちゃくちゃ面白いけど、真…

「死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々」 2

阿部共実最新作。 初出を見てみると、必ずしも掲載された順に並んでいるわけではないことがわかる。 ひとつの作品としての流れを考えてくれているという配慮が嬉しい。 阿部共実のマンガの特徴として、女の子の会話文がとても魅力的であることが挙げられると…

きれぎれ  町田康    

芥川賞をとったらしいけど、町田康の最高傑作はやはり「告白」で、それと違って現代の物語を書いたらテイストがほぼ同じになってしまうんだと思った。 「きれぎれ」も、もう一編収録の「人生の聖」も、面白いところはあるけど、それを帳消しにするくらい読み…

「世界の終わり、あるいは始まり」  歌野昌午      

息子よ、お前なのか。 「葉桜の季節に君を想うということ」を以前読んだときから、この作者はすごい人だと思っていたが、この作品でそうした思いはさらに強まった。 非常に実験的だ。何にせよ、実験的なものは評価したい。 パラノイアじみた父親の思考の物語…

「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い」 西尾維新    

かねてより読みたかった西尾維新の作品。そしてこれがデビュー作。 この本の中で、主人公の「ぼく」は人生に絶望している。何事にも無関心だが、他人には流されてしまう。無関心だが、それを理由にコミュニケーションをすべて断絶するほどの勇気や根性はなく…

「!」 二宮敦人

3編のホラーを収録 「クラスメイト」はミスリードを誘うのが不自然すぎる。「穴」は主人公の女の死体に対する感覚が慣れすぎてて、こいつが夢遊病的に殺してたのかとも思ったが、そこは単純に描写が甘かっただけらしい。 でも犯人はそれ以外なら男だと思って…

「白痴」  坂口安吾   

観念を乗り越えたい。観念は弱すぎる。なんとかして現実・実践にもっていきたいものだ。 弱者である観念だけの存在は、非常に利己的で、「冷酷」で「鬼」になれるということを、この短編集のなかの「青鬼の褌を洗う女」の中で坂口安吾は見事に指摘している。…

「ほしのこえ」 大場惑  

『一五歳のミカコだよ。ね、わたしいまでも、ノボルくんのこと、すごくすごく好きだよ。』 新海誠が原作のアニメを小説にしたやつ。 15歳のミカコにしてはそぐわないような言葉を使ってしまっていて、ん?と思う。主観年齢とか。ミカコが徴用されているのを…

「テラフォーマーズ」 15

言葉が強くていい。 後ろに君がいる。 何かのために がオレにはない。 ネタバレになるから名前は伏せるが、ある夫婦の死が壮絶すぎる。 二人とも同じように上半身吹っ飛ばされて死ぬってなんという後味の悪さだ。 そして二人は、ちゃんと生きていた過去があ…

「64 」 横山秀夫 

表紙がかっこいいね。タイトルもかっこいい。ロクヨン。1ページあけて、カラーページに電話ボックスが奇妙な光の中にあるのも、怖いような、幻想的な光景で良い。ただ、長すぎる。 650ページくらいある。基本的に、500ページを超えている小説は気をつけなく…

「堕落論」 坂口安吾   

またもやフィクションじゃなくて評論。 この評論集の中では、坂口安吾が小林秀雄について書いた、「教祖の文学」の中に、生きることの意味のわからなさがちゃんと書かれていてえらい。 えらいね。 人間は何をしでかすかわからない。自分でもわけが分からない…

「夫婦茶碗」 町田康  

「夫婦茶碗」と「人間の屑」の二編を収録 両方とも屑が出てくるけど、なんかちゃっかり人生を楽しんでいるような屑であるから、見てて親近感がわかない。 妊娠させすぎだろ。 「人間失格」もそうだけど、簡単にセックスしちゃってる人間が自分は屑だ、って思…

「虫眼とアニ眼」   養老孟司・宮崎駿   

養老孟司と宮崎駿の対談本。フィクションじゃねーけども。 養老も宮崎も、二人とも自然に触れている。人間関係から自由な、「自然を見る眼」を持っている。 自分たちの世代は、テレビもインターネットもスマホもあって、「人間や人工物や人間関係に対する眼…

「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」 押見修造  

吃音の高校生の女の子の話。 押見修造はうまいね。絵も話も。 吃音のつらさは自分にはわからないが、自分の醜態を人に見せなくてはならない恐怖はわかる。 例えば自分にとって、作業は恐怖だ。 仕事は「作業的な何か」の塊だ。だから自分は仕事が怖くてたま…

「ちーちゃんはちょっと足りない」 阿部共実 

阿部共実が天才だと思う理由を全て書こうとしたら、きっと俺は老人になってしまう。それくらい時間がかかるから、「ちーちゃんはちょっと足りない」だけにとどめよう。 このマンガは「このマンガがすごい2015」オンナ編で1位だけど、一般受けはしないだ…